【優勝】山下和彦(3562・広島)「G2江戸川634杯・モーターボート大賞」は、激戦だった3つのセミファイナルを勝ち上がった精鋭6選手によって6月19日(日)に優勝戦が行われた。この日は朝から南の「追い風」が強めに吹くコンディション。1~6Rでは安定板が装着された他、3Rまでは2周戦でのレースとなったが、潮が順目(上げ潮)に変わった後半戦は水面状況が一気に回復。大一番の優勝戦は、良好な水面コンディションで行われた。
レースは、1号艇で人気を集めた山下和彦がインから「コンマ11」のトップスタート。回り足はかなりいい状態に仕上がっていただけに、今節の“パワー2強”だった2号艇の三井所尊春・3号艇の上村純一よりも速いスタート決めた時点でほぼ勝負あり。そのまま1Mを先に回り、三井所、そしてカドから差しハンドルを入れた4号艇の平尾崇典を2Mで振り切ると、あとは独走態勢を築いて1着でゴール!
2着には、1周2Mで平尾を回して捌いた三井所。3着争いは平尾と、5号艇の湯川浩司で接戦となったが、3周1Mで平尾が湯川を競り落とし3着に入線。2連単・3連単ともに、人気サイドでの決着となった。
これが今年初、通算では「60回目」、江戸川では「5回目」の優勝となった山下。G2以上のグレードレースでは、2009年9月のG1芦屋周年以来、約6年9ヵ月ぶり「4回目」の優勝で、デビュー初Vの地でもある江戸川で新しい勲章を手に入れたとともに、来春3月に児島で行われるSGクラシックの出場権利も獲得した。
今節の山下を振り返ると、肝となったのは、5コースから「捲り差し」で制した初戦(初日4R)と、予選ラストの4日目(10R)でインから敗れたレースだろう。まず初戦だが、「重さがあった」と調整が合っていない中でのレースだったが、カドの湯川浩司が伸びてレースを作ったことで好展開が生まれ、それを逃さずしっかり白星。このレースで調整の方向性が掴めた上に、調整途上の中で得た貴重な外枠からの白星でリズムに乗れた。
また、予選ラストのイン戦はスタートで立ち遅れて3着だったが、「起こしの位置で助走距離を稼ごうと欲をかきすぎた…」と反省。それを踏まえた翌5日目の準優戦(1号艇)では、起こしの位置を変えてSをバッチリ決め、見事人気に応えた。他の準優1枠勢(齊藤仁&中田竜太)が勝ち切れなかったことで、ファイナルは3走連続の1号艇となる“ツキ”もあったが、その優勝戦でもしっかりトップSを決めたことで、勝利を確定付けた。
以前に、同県の先輩である市川哲也の名前を挙げて「市川さんのようなオールラウンダーになりたい。最近はちょっと近づけているかな?」と話していたが、今節のコース不問での活躍はまさに理想とするオールラウンダーと呼ぶに相応しいもの。足元さえ整っていれば上の舞台でも捌き負けはないだけに、この優勝を起爆剤に下半期は更なる活躍に期待したいところだ。
また、レース後の表彰式には大勢のファンが集まったが、山下は最後のインタビューで優勝賞金の一部を熊本の震災支援へ寄付することを客席へ向かって伝えた。「ボートレースが多くファンの支えによって成り立ち、選手が賞金を得られるのもファンの存在があってこそ」との思いから、賞金の使い道の了承をファンから得たい…という形の発表だったが、会場のファンからは大きな拍手と歓声が挙がった。とても温かい雰囲気の表彰式であったとともに、山下の筋の通った言動に実直な性格が垣間見えた気がした。 |